はじめに
ここでは、自律神経の不調を改善するためのとても簡単なエクササイズについてお伝えしていきます。
このエクササイズは、とてもシンプルです。
「1日30分、ある体勢で寝ているだけ」
それだけで十分に効果をうむ方法ですので、ぜひお試しいただきたいと思います。
ただ、やることはシンプルですが、実践するにあたってとても大切なポイントがあります。
それはベースとなる考え方(意識すべきポイント)なのですが、その考え方で行わないと効果が半減してしまうのではじめにお伝えしておきます。
取り組む上で大切なポイント
まず、このエクササイズを取り組むにあたって、大前提としておぼえておいていただきたいことがあります。
それは、「“引き算”の考え方をする」こと。
引き算の考え方というのはどういうことかというと、「何かをする」という意識ではなく、「やめていく」という意識で行っていただくということです。
やめるというのは、「いま自分でしてしまっている余計なこと(症状を引き起こしている緊張などの要因)をやめていく」ということです。
実は、私たちが何かしらカラダの痛みや不調を感じているときは、「自分自身でそうなるようにしてしまっている」場合がほとんどです。
例えば、「肩こり」がわかりやすいかもしれません。
デスクワークや家事、長時間の立ち仕事などが続くと、知らず知らずのうちに肩が凝ってつらくなることがあると思います。
多くの人はそのコリに対して、首や肩をぐるぐる回したり、叩いたり、湿布薬をはったり、お風呂で温めたり、マッサージに行ってほぐしてもらったり、解消できそうな何かをすることでしょう。
でも一時だけ楽になっても、すぐにまたぶり返してしまう。
このようになかなか解消できないのは、根本的な要因に対処できていないからなのです。
肩こりの要因のほとんどは、“自分で肩がこるようにしてしまっている”ことです。
たとえば、スマホやパソコンを見ているとしましょう。
目を凝らして画面を見続けていると、焦点をあわせるための目の奥の筋肉が緊張して、頭は画面に近づくように前に落ち込んで、首の後ろも縮こまり、背中がまるまって、首肩の筋肉は重い頭を支えるために緊張しっぱなしになります。
知らず知らずにしてしまっているこうした体勢が、肩こりを引き起こす原因になるのです。
でも、その姿勢のくずれを「やめる」という部分にはなかなか意識が向かないもので、ほかの何かで解決しようとしてしまうわけです。
私たちのカラダはとても素直で、脳から受けた指令に対して忠実に従うようにできています。
たとえば、猫背になって、首をすぼめるように肩が上がり、頭が前に落ち込む、そうした姿勢をとっている時は、実はそうなるように指示されていて(自分で無意識にそうさせてしまっている)、カラダはそれに忠実にしたがっているだけということです。
だから、その指示をやめることができれば、肩こりは自然となくなるわけです。
背中を丸めているのをやめて、すぼめていた肩をおろして楽にしてあげて、筋肉を緊張から解いてあげる。
そうすることで、首や肩の筋肉で支えなければならなかった重い頭がスッと元の位置に戻ってバランスされて、姿勢が戻り、コリ固まっていた肩周りの筋肉も緩んで、症状が消えていき、「肩こりをやめる」ことができるわけです。
あれをやればどうだろう・・・こうすれば良くなるかな・・・
と、症状に対して何かを付け足していっても、根本的な解決に至りません。
自分が気づいていないところでしまっている「本当の要因」をやめる、その「引き算」の考え方が症状改善のポイントになるということです。
自律神経症状もそれと同じです。
いま自律神経の乱れが現れているということは、そうなるように自分のカラダにさせてしまっている可能性が大きいです。
だから、それを「やめていく」ことによって、根本からの改善につながるわけです。
つまり、自律神経の乱れを引き起こしている今現在の“間違った習慣をやめる”ことで、自然と症状を消していけるようになるということです。
そして、その「やめる」ための最初の重要なステップが、今回あなたにお伝えするシンプルなエクササイズです。
この「やめる=引き算」の考え方を基本に取り組んでいただけたらと思います。
「動かないこと」
これは今お話しした「引き算」的な考え方につながることですが、とても重要なポイントです。
一般的にエクササイズやトレーニング、ストレッチ、リハビリテーションというと、「何かをする」という「動くこと」を前提に行われます。
腕をこう動かして〜、脚をこう上げて〜、身体をこう動かして〜、のように動きをベースに組みあげられています。
実はここが大きな落とし穴です。
どういうことかというと、動きの中だとズレが生じてもごまかしがきいてしまうからです。
絶対にズラしてはいけないポイントがあったとしても、それが動きの中で行われると曖昧になってしまって、ズレても気づけないのです。
そうなると効果激減です。
だから、そうならないためにこのエクササイズでは「動かないこと」をベースに行っていただきます。
動かない中で、集中して「症状の解消につながる最も大切なポイント」に意識を向けることができるようになるために。
動きの中でどうこうしようとするのではなく、「動かない」中で、集中して意識を自分のカラダの内側に向けていくことがとても大切です。
ですので、このエクササイズは「運動」というイメージではなく、「自分自身のカラダへの意識と気づきを得る」という意識で取り組んでいただきたいと思います。
シンプルに、集中して、「意識」と「感覚」を養ってください。
その意識と感覚が“症状を再発させないためのカギ”にもなります。
前置きが長くなりましたが、お伝えしたことはとても大切なポイントですので、ぜひ念頭において取り組んでいただきたいと思います。
エクササイズのやり方
では、エクササイズへと入っていきましょう。
お伝えした通り、やるべきことはとてもシンプルです。

1日30分間、この図のような体勢で横になってください。
・仰向けに横になり、膝を立てて、腰が反り返らないようにする
・頭の下にタオルなどを丸めて入れる(※首の下には入れないこと)
・後頭部を背中に対して少し高めにする(理想は3〜5cm)
・メガネやコンタクトレンズは外す
・目は閉じるか、焦点を合わせずに広く視界をとる
(目の緊張が首の筋肉を緊張させてしまうため)
・この体勢で30分ほど静かに横になる
なぜこの体勢を取るのか?
その意味合いについてお話ししておきましょう。
目的と理由はいくつもありますが、一つは、
この形が重力に対して背骨が最も緩みやすい理想的な体勢だからです。
自律神経のはたらきに影響を及ぼす最も大きな要因は、首の緊張です。
そして首の緊張は、背骨が固まることで起こります。
背骨を固めてしまうのは筋肉の緊張ですから、その筋肉の緊張を解いてあげるために、最も緩みやすいこの体勢をとるということです。
そして、もう一つは、この形が「頭」と「身体」のバランス(姿勢をとった時の関係性)を理想の状態に戻してくれる体勢だからです。
猫背の場合、頭が身体に対して前に落ち込み、崩れてしまっている姿勢です。
逆に、軍隊的な“気をつけ!”のような姿勢は、アゴを引きすぎて身体に対しての頭の位置が不自然に下がりすぎです。
無理やり真っ直ぐに見える姿勢を作ろうとしても、首や肩がガチガチに緊張して、かえってカラダにとって大きな負担になってしまうのです。
そうした“間違ったバランス”ではなく、頭が身体の上で「自然で」「楽に」バランスできる位置へと戻していくための方法が、このエクササイズで行う体勢でもあるのです。
そして、このエクササイズを習慣的に行っていただくことで、筋肉の緊張が解けていく感覚、背骨が緩んでいく感覚、首の緊張が解けていく感覚、など自分の身体がどうなっているかを感じることができる細かい感覚、「体内感覚」がだんだんと培われていきます。
意識を自分のカラダの中に向けることで、今まで気づかなかった間違った習慣に気づくことができ、それを元にして習慣を正しいものへと変えていくきっかけとなるのです。
そして、その感覚は自分のカラダを観察すればするほど、意識すればするほど、さらに細かい部分まで研ぎ澄まされていきます。
呼吸している時の背骨の伸び縮みしている様子や、首が緩んで、呼吸が楽になって、不必要にしていた緊張を自分の意識で解くことができるようになっていきます。
「動き」の中ではこうした繊細な感覚が曖昧になってしまうため、「動かない」という最もシンプルなエクササイズで養うのです。
もちろん、これは特別な能力でもなんでもありません。
本来、誰もが養うことのできる感覚ですのでご安心ください。
個人差はありますが、早い人であれば3ヶ月程度で相当クリアな感覚として捉えることができるでしょう。
いくつもの目的と理由をもったエクササイズですが、まずはシンプルに、動かず横になっているだけというカタチから取り組み始めてください。
静かに、意識していくことで、自然と自律神経の乱れの要因をなくしていくことができるようになります。
注意点
なお、このエクササイズをする際の「注意点」はこちらです。
・冷えた床の上では行わない
冷えで血行が妨げられる場合があるので、暖かい場所で行ってください。
・適度な硬さのマットなどの上で行う
柔らかすぎると沈み込んでバランスが変わってしまうので、沈み込みの少ないカーペットや畳、ヨガマット、薄いマットレスの上などが良いでしょう。
また、頭の下には、タオルなどを丸めて高さ調整のできるものが良いでしょう。
高さは3〜5cmが理想となりますが、猫背が習慣化していた方などは、それだと最初は低すぎて、首がそりかえってしまう場合があります。
その場合には、はじめは多少高めに設定して、徐々に薄くしていくようにしてください。
首が反り返った状態では、首の後ろ側にある神経の通り道を狭めてしまい、神経のはたらきに影響を及ぼしてしまいます。
首が反り返らない高さで、首の筋肉が緩みはじめて、頭とカラダのバランスが戻っていくのに合わせつつ高さを調整していきましょう。
おわりに
いかがでしょうか?とてもシンプルで簡単なエクササイズだったと思います。
このステップを習慣化していただくことで、実際、症状はかなり改善できるようになります。
なお、一番のハードルは、ご自身の身体に対する「感覚」を養う点だと思います。
もっとも時間を要する部分ではありますが、それが症状解消の一番のポイントでもあります。
本マニュアルでお伝えした方法は、ファーストステップですが、このステップの後に、「立ち上がった時」「動く時」「動き方」といった次の段階がありますが、その全ての根幹にあるのは、この最初のステップで得ていただく「意識」と「カラダの感覚」です。
はじめは、実感もなく、よくわからないかもしれませんが、必ずや良い結果に繋がっていきますので、ぜひ継続していただきたいと思います。
また、エクサイズ疑問やご不明な点、症状に関するご相談などありましたら、いつでもLINEやメールなどでご質問ください。
しっかりとサポートさせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
のぞみ鍼灸院
埼玉県川口市朝日6-9-21
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